ZIGEUNERWEISEN | |
1.祝祭チャールダーシュと雷鳴チャールダーシュ(マールク・ロージャヴェルジ) 19世紀前半ハンガリーの代表的な大衆音楽の作曲家でヴァイオリニストのロージャヴェルジ(1789-1848)の代表作として知られる。ゆったりと壮麗な雰囲気の《祝祭チャールダーシュ》と、疾走感あふれる《雷鳴チャールダーシュ》を組み合わせることで、緩→急の対照を楽しむジプシー音楽らしい雰囲気がうまく表現されている。 2.チャールダーシュ(ヴィットリオ・モンティ) イタリアの作曲家モンティ(1868-1922)の作品として世界的に著名な曲。モンティはヴァイオリンとマンドリンの作品を得意としたが、この《チャールダーシュ》はハンガリーのチャールダーシュのスタイルを巧く取り入れており、今ではジプシー楽団のレパートリーとしても欠かせない。 3. たった一人の女の子がいるだけ(作曲者不詳) 19世紀後半の大衆歌曲の作者センティルマイの詞によって知られる歌の旋律。この歌自体、ハンガリーでは発表当時から人気を博していたが、この旋律がサラサーテの《ツィゴイネルワイゼン》の中間部に用いられたことで、国外でも広く知られるようになった。 4.お金を使い果たしてしまって(ヤーノシュ・ビハリ) ビハリ(1764-1827)は、ツィンカ・パンナが創始したとされるジプシー楽団を内外に広く知らしめた。ベートーヴェンもビハリの演奏を耳にした一人とされる。演奏ばかりでなく、数多くのレパートリーも作ったが、記譜ができなかったため、彼の作品はすべて同時代人によって書き留められ、後世に伝えられた。 5.2本のギター(フェラーリ) 同じロマ(ジプシー)でも、この曲はロシアのロマのレパートリーとしてあまりにも有名。ゆったりとした出だしが次第に加速するさまは、いかにもロマの音楽らしい。ロシアのロマはギターを好んで用いるが、ここではその2本のギターの紡ぎ出す調べを、いかにヴァイオリンで表現するかがききごころ。 6.黒いひとみ(作者不詳) この曲も、ロシアのロマの奏でるメロディとしてあまりにも名高い。国は違ってもこの人々に共通する情熱的なまなざしを歌ったこの曲は、ハンガリーのジプシー楽団でも好んで演奏される。 7.口笛ホラ(グリゴラシュ・ディニク) ややもったいぶった出だしに続く颯爽とした曲調から《口笛ホラ》と名づけられたこの曲は、20世紀前半にやや大衆的な曲を数多く手がけたルーマニアのディニク(1889-1949)の作。「ホラ」はルーマニアの代表的な輪舞のための音楽で、ディニクはホラを得意としたが、この曲はその中でもハンガリーのジプシー楽団がしばしば取り上げている。 8.ハンガリー舞曲第5番(ヨハンネス・ブラームス) 一連の《ハンガリー舞曲》はブラームス(1833-97)の作品の中でももっとも演奏の機会が多いであろう。彼はハンガリーのヴァイオリニスト、レメーニと知り合ったことをきっかけに、当時ハンガリーで流行していた大衆的な旋律をいくつも集め、これを基に《ハンガリー舞曲》を手がけている。 9.ツィゴイネルワイゼン(パブロ・デ・サラサーテ) このディスクのトラック3に収められた《たった一人の女の子がいるだけ》を中間部にもつヴァイオリン用幻想曲。19世紀後半に世界的に活躍したスペインのヴァイオリンの巨匠サラサーテ(1844-1908)が作曲、彼自身の華やかな演奏により、広く知られるようになった。 10.お前が木に咲く花なら、私は木になろう(アールパード・バラージュ)?静かに、愛しい人よ(ピシュタ・ダンコー)さあ、始めよう(ジェルジュ・クバーニ) ここで聴かれるのは、かつてはジプシー楽団のレパートリーで中心的だった曲種。本来は歌詞をもつ大衆歌曲をいくつかメドレー風につなげて演奏し、お客もよく知った曲は一緒に口ずさむのが古くからの習慣だった。たいてい、ゆったりした曲→中庸のテンポの曲→急速で快活な曲、と組み合わせて、高揚した気分のうちに弾き終えるパターンが多い。 11.ホラ・スタカート(グリゴラシュ・ディニク) トラック7と同じディニクの、やはりホラのスタイルによる作品。この曲では、ルーマニアの大衆音楽の担い手で、その多くがロマであるラウタールと呼ばれる演奏家たちの音楽のスタイルをうまく再現している。心躍るような軽快な曲調で、ルーマニア音楽の代表的レパートリーとしてアンコールなどでもよく取り上げられる。 12.暗い日曜日(レジェー・シェレシュ) シェレシュ(1899-1968)は俳優出身で、音楽は独学で身につけた人物だが、ピアニスト、作曲家として次第に知られるようになり、やがて音楽を専業とした。この曲はその彼の代表作で、戦中にその厭世的な気分から何人もの兵士たちを自殺に追いやったというエピソードをもっている。 13.ひばり(グリゴラシュ・ディニク) この曲の旋律自体は伝承曲としてディニク以前からも知られ、やはりルーマニアの代表的作曲家のエネスコが《ルーマニア狂詩曲第1番》の中でも取り上げられた。ひばりのさえずりを模した部分では、ヴァイオリンの技巧が遺憾なく発揮されるため、ハンガリーのジプシー楽団でも重要なレパートリーである。 14.あきらめ(ピシュタ・ダンコー)だめよ、だめ(ダンコー)ハ短調チャールダーシュ(作者不詳) ここでもトラック10と同じく、大衆的な旋律のメドレーが聴かれる。こうしたメドレーではヴァイオリンばかりでなく、ツィンバロムやクラリネットのソロ・パートも含まれ、楽団メンバーの技量のほどが発揮される(ここでは、《ハ短調チャールダーシュ》でこのようなソロを聴くことができる)。1、2曲目の作者ダンコー(1858-1903)は膨大な量の大衆歌曲を手がけたことでも知られる19世紀末の伝説的ヴァイオリニスト。 |
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